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<Author: 李白>
<Title: 蜀道難>
<Format: 樂府詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 蜀道難>
<BookPage: 200>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
噫吁戲！危乎高哉！蜀道之難難於上青天！蠶叢及魚鳧，
開國何茫然。
爾來四萬八千歲，
不與秦塞通人煙。
西當太白有鳥道，
可以橫絕峨眉巔。
地崩山摧壯士死，
然後天梯石棧相鉤連。
上有六龍回日之高標，
下有衝波逆折之回川。
黃鶴之飛尚不得過，
猨猱欲度愁攀援。
青泥何盤盤，
百步九折縈巖巒。
捫參歷井仰脅息，
以手撫膺坐長歎。
問君西遊何時還？畏途巉巖不可攀。
但見悲鳥號古木，
雄飛雌從繞林間。
又聞子規啼夜月，
愁空山，
蜀道之難難於上青天，
使人聽此凋朱顏。
連峯去天不盈尺，
枯松倒挂倚絕壁。
飛湍瀑流爭喧豗，
砅厓轉石萬壑雷。
其險也如此，
嗟爾遠道之人胡爲乎來哉！劒閣崢嶸而崔嵬，
一夫當關，
萬夫莫開。
所守或匪親，
化爲狼與豺。
朝避猛虎，
夕避長蛇。
磨牙吮血，
殺人如麻。
錦城雖云樂，
不如早還家。
蜀道之難難於上青天，
側身西望長咨嗟。
<End Poem>
<Translation>
ああ、危険なことよ、高いことよ。蜀への道の困難なことは、
青空に上るよりも難しい。蚕数や魚鳧などの古代の王が蜀の国を開いたのは、何と大昔のことですべてがほんやりとしてしまっていることか。それ以来、実に四万八千年、蜀の地に隣接する泰の国境とは、住民の往来もなかった。

長安の都から西に向かえば、太白山のあたりに、鳥だけが通える険阻な山道があり、その道によってのみ峨眉山の頂上を横ぎることができるのだ。昔、この道で大地がくずれ山がくだけて、五人の勇士が生き埋めになって死んだと伝えられるが、そうした後で、天にとどくはしごと、石のかけ橋とが、はじめて、
引きつらねて作れたのだ。

上には、日車を牽く六匹の竜も、その車の向きを変えて引き返さねばならぬ
高山の高い木の枝があり、下には、つきあたる大波が、うず巻き流れる谷川がある。その高木のあたりは、仙人の乗る黄色い鶴が飛んでも、通り過ぎることができず、その谷川は)猿の類が渡ろうとしても、よじ登って渡ることを心配するありさまなのだ。

秦から蜀への途中にある青泥の山は、なんと曲がりくねっていることか。百歩の間に九回も折れ曲がって、険しい山々を回っている。参宿を手で胸をなでつつ、座りこんで深いため息をつく。

そこであなたに聞きたい、これから西へ旅して蜀の道を行きいったいいつの日に帰ってくるのかと。険しく恐ろしい道、高くそびぇ立つ岩は、よじ登ることもできない。ただ目に見えるのは、悲しい声の鳥が古い木で鳴き叫び、雄が喋をつれて林の間を飛びめぐる姿だけなのだ。
さらにまた聞こえるのは、蜀の地に多いほとときすが、夜の月に向かって鳴いて、人の気配のない山で悲しみうれえている声ばかり。

蜀への道の困難なことは、青空に上るよりも難しい。人にこのことを聞かせては、血色のよい若々しい顔をすっかり老いこませてしまう。

連なる峰々は、天から隔たること一尺に足らず、古い松の木が、さかさまにきり立った岩壁によりかかっている。水勢の飛ぶような早瀬や、しぶきをあげて流れる滝は、その音を争ってとどろきわたり、がけの岩を打ち、石をころがして、多くの谷は、雷唱のように大きな音をたてる。その険しきはこのようである。ああ、君よ、遠い道のりをやって来た人よ、どうしてこんなところに来たのか。蜀道の最難所の剣門山は、高く険しく、高く高くそびえている。一人の男が立ちふさがって、この関所を守れば、一万人の男でも、これを開いてまかり通ることはできないのだ。守る人が、もしも王家の親族でないならば、この天下の険に拠って、反逆の心を起こしおおかみと山犬のようになってしまうであろう。

蜀の地では朝は、たけだけしい虎の害から逃れ、夜は大きな蛇から逃げねばならない。天険に拠るその猛獣たちのような逆巨はきばを磨き、血を吸って、人を殺すこと、麻を刈り取るように、むやみに多いという。
その名も美しい錦城成都は、楽しいところとはいっても、早く家に帰ったほうがよい。

蜀への道の困難なことは、青空に上るよりも難しい。背のびをして、西方
の蜀を眺めやり、長く長くため息をつくのである。
<End Translation>